「テイラーの科学的管理法を語ろう」37日目

人事管理の古典を勉強しました。「テイラーの科学的管理法」について時代背景やテイラーの人物像を考えながら復習していきます。

「テイラーの科学的管理法(テイラー・システム)」は、1900年代初頭にアメリカのフレデリック・テイラーが提唱しました。当時のアメリカでは「安定的に労働力を供給できない」という課題がありました。多くの企業で内部請負制度が取られており、業務を請け負った熟練労働者である親方が生産のために労働者を雇い、作業を管理しました。請負価格は作業効率が向上すると切り下げられます。そのため、労働者は意図的に作業効率を上げないようにしました。組織的にサボって生産調整をしていたのでした。

 

テイラーはこの問題に対して、「労働者には高賃金、経営者には低労務費」を実現しようとしたのでした。そして、客観的な手法による管理「科学的管理法」が考え出されました。それまで、労働者の1日の作業量は親方の勘と経験によって決定されていました。そこで、テイラーは作業を簡単な要素動作に分解し、ストップウォッチで測定します。無駄な動作を排除し、最短で効率的な作業時間(標準作業時間)を決定したのです。標準作業時間で作業を実行するために道具も標準化されました。作業の計画と実行が分離されることで、生産性の向上が見込まれました。やがて現場の作業員は自分たちの勘や経験、意志や裁量ではなく、作業指図票に記入されたとおりに、時間内に作業を遂行しなければならなくなりました。ノルマ管理の体制が整えられました。

 

テイラーは「経営学の父」と呼ばれています。「経営の神様」ドラッカーの著書でも繰り返しテイラーに言及されているそうです。発明家でもあったテイラーは「科学的管理法」をどのような思いで生み出したのでしょうか。「労使の最大繁栄」を目指し「上がった生産性を従業員に還元する」考えで、生涯を「科学的管理法」に捧げたとされています。反面、当時の労働組合を中心に、現場の人からは受け入れがたい破壊的イノベーションだったのかもしれません。

 

ここまでテイラーの「科学的管理法」について考えました。人事管理の分野でも、経営戦略の分野でも超重要人物だと知りました。ドラッカーはテイラーについて「労働科学におけるアイザック・ニュートン、またはアルキメデスとでもいうべき人物であるが、それでも最初の礎石を据えたにすぎない。だが彼の死後60年もたったのに、その後この礎石に付け加えられたものはあまり多くない」と語ります。偉大な影は今も長く伸びています。

参考:上林憲雄『人的資源管理』(中央経済社、2016)